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映画ノート

【映画】贖罪の5つのステップ『最高の人生』

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最高の人生(2003)アメリ

原題:Levity
監督:エド・ソロモン
脚本:エド・ソロモン
出演:ビリー・ボブ・ソーントンモーガン・フリーマン / ホリー・ハンター/ キルステン・ダンスト  / フィル・セベラーノ/ トッティ・ゴールドスミス
コンビニ強盗で殺人を犯し終身刑に処せられたマニュエルは、23年目のある日、出所を許される。


【感想
ちょっと変わった映画を観ました。
主人公は強盗殺人を犯し終身刑を食らった男マニュエル(ビリー・ボブ・ソーントン
彼は罪の重さを認識し、牢屋の壁に自分が殺した青年の新聞記事の写真まで貼って
一生涯刑務所で暮らすことを受け入れています。
ところがある日減刑を言い渡され、刑期23年で出所することになり、マニュエルは戸惑います。
彼は自分の罪を償う過程を奪われたと感じているのです。
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まず、ソーントンの佇まいがいい。
地下鉄に降り立っても、人々の流れにはついていけず、ぽっかりと取り残される
質素なホテルに宿をとるも、することもなく、ただベッドに座っているのみ。
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夜も明けやらぬうちにホテルを出たマニュエルはあるアパートの前に立ち
一人の女性(ホリー・ハンター)が出てくるのを見届けその場を去る。

彼は11世紀に書かれたある本に書かれていた「贖罪のために5つのステップ」を振り返ります。
若干言葉の使い方が違ってるかもだけ

1、罪を認識すること
2、罪を後悔すること
3、隣人に対し罪を償う
例えば隣人のニワトリを盗んだのなら替りのニワトリを差し出す
4、神に対し罪を償う
5、同じ場所同じ状況に自分を置き、今度は違った行動をとる
といった内容。

ただ、4に行くためには3までをクリアすることが不可欠で
死んだ青年を生き返らせることはできないことから、マニュエルは自分が神に許されることはないと
諦めているんですね。
03 Holly Hunter as Adele Easley 

それでもできる限りのことをしようとマニュエルは行動する
ホリー・ハンターは実はマニュエルが殺してしまった青年の姉で
マニュエルは彼女の後を追い、身分を隠したまま、彼女の役に立つことから始めようとする
といった風に、結局彼は5つのステップをたどることになるんですね。

もしも彼が終身刑を全うするだけなら
彼はこの5つのステップを踏むことはできなかったはずで
彼は生涯、心の安寧を得ることはできなかったんだろうなと思う。
それなりに重い話なのに「軽さ」という意味を持つ原題はなんだろうと思ってましたが
多分心を軽くする、重い十字架を下すといった意味があるのかなと思います。

死んだ青年が現れたり、しまいには彼が神の役割を担ったりと
少しファンタジーで宗教的な部分もあるものの
マニュエルの罪悪感を、日々の暮らしの中の自分の小さな罪に置き換えて考えることは可能で、
犯罪者だけの話ではない、贖罪と再生の物語として大変興味深いものがありました。

人間罪の意識を抱えたまま生きるのは辛いですから。
罪を認め、謝ってできる限りの償いをすることで心の重責も軽くなるんですね。
ビリー・ボブは飄々とした役作りで、作品の重さをやわらげています。

Levity (2013) 21 

共演者はほかに神父役にモーガン・フリーマン
堕落した金持ち少女役にキルステン・ダンスト

フリーマンはいつもよりだみ声で喋り、神父ながらある意味グレイなところのある男。
しかし彼は限りなく神に近づこうとする存在として描かれてました。


機会があればぜひ観てほしい作品です。









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