しまんちゅシネマ

映画ノート

【映画】ジョーカー

暫く空いてしまいました。
先月末から10日ほど別府に戻ってまして、
『ジョ―カー』を観てきたので今日はその感想を。

バットマン』シリーズのジョーカーを中心に据えた本作
公開前からジョーカー役ホアキン・フェニックスの演技が話題になっていました。

ホアキン演じるアーサーは病気の母と暮らしながら、広告看板を手に大道芸人として細々と生計を立てる青年。
それでも人に笑いを届けるコメディアンになりたいという夢を持っているのですが
様々な不幸な出来事が彼を襲い、やがて狂気のジョーカーへと変貌を遂げるのです。

本作の公開にアメリカ本土が妙に警戒感を示していましたが、なるほど確かに危険な要素はありますね。
「悪に堕ちる者にはそこに至る理由がある」というところで留めていれば
「理解」すれば世界を「悪」から救う可能性に期待できるのかもしれないけれど
暴力に魅入られ、そこに快感を覚えるものが生まれてしまうのは、世界観としてかなりヤバい。
しかも、その悪が世間を呑み込んでいくところに、さらに怖さがあります。

本作は『バットマン・ビギンズ』に繋がる構造なんですが
同じゴッサムシティを舞台にしても、バットマンではなく
悪の化身ジョーカーにフォーカスした映画を作るところに、今の時代の暗さを感じます。

GCコミック的な要素を完全に排し、アーサーの苦悩をあぶりだすことで、ジョーカーの誕生にリアリティが生まれる。
近年日本でも、「こんなおとなしそうな人がどうしてそんな凶行を?」と思う事件が発生してますけど、本作を観るとジョーカー予備軍は世界中いくらでもいると思わされるのです。

この映画を好きかと言われると答えに窮するのだけど、人の心の闇の行きつくところを奇妙な陶酔感をもって見守ってしま自分がいました。
アーサーの絶望と狂気を演じたホアキンの演技は恐ろしく、かつ悲しくて絶品です。

 

映画データ
製作年:2019年
製作国:アメリ
監督:トッド・フィリップス
脚本:トッド・フィリップス/スコット・シルヴァー
出演:ホアキン・フェニックス
    ロバート・デ・ニーロ
    ザジー・ビーツ
    フランセス・コンロイ
    マーク・マロン
    ビル・キャンプ