『逢びき』また来週、同じ時間に
デヴィッド・リーンも好きな監督です。
今日は小品ながら人気の高い『逢びき』を初鑑賞しました。
逢びき(1945)
Brief Encounter
【あらすじ】
会社員の妻で子持ちのローラ(セリア・ジョンソン)は、毎週木曜、近郊の小都市への買い出しついでのランチや映画を楽しみにする平凡な女性。ある夕方、帰りの汽車を待つホームで目に入った砂を、居合わせた医師アレック(とレヴァー・ハワード)が取り除いてくれた。2人は待合のバーで顔を会わすうち、互いに魅かれていく。
【感想】
互いに家庭のある身の男女の出会いと別れを描くイギリスのドラマです。
最初は少し戸惑いつつ、夫の話なども持ち出してそれなりにバリアを張っているローラですが、駅での逢瀬を重ねるうちに、愛しあってしまうんですね。
ローラの回想をローラ自身のナレーションで語っているところから、ローラ目線の不倫劇ということになりますが、逢瀬のときめきが深い罪悪感へとシフトし自分を苦しめる心境が良く伝わります。
時代ということもあってか、全てを捨てて恋に走ることにはならず、やがて自分たちの手で関係を終わらせる2人。
ともすればドロドロなドラマになってしまうところ、互いを尊重し別れを決意するところが今も人気の名作ということになるのでしょう。
個人的には、2人の恋物語以上にローラの夫の存在が良かった。
冒頭の疲れ切って涙を流すローラを夫が心配する場面は、実はその晩ローラがアレックと別れてきた後だというのが最後になってわかります。このシーンを巻き戻して観てみると、夫はローラが見てる時には呑気にクロスワードパズルをしてるけれど、ローラが下を向いてるときには、不安な面持ちで妻を見つめてるんですね。
夫はいつから気づいていたんだろう。
おそらくは何かを察知しながら、普段と変わりなく妻を迎えたであろう夫。
もしかしたら夫も何らかのそぶりを見せていたかもしれないけれど、医者との恋に舞い上がり夫のことなど眼中になかったローラはそれに気づきもしなかったのでしょう。
前述したように、夫の表情の変化をカメラがとらえている時も、ローラ自身は夫を見ておらず、だから彼女の回想の中で、夫は相変わらず呑気でただの善良な人なのです。
原作では時間の流れに沿って描かれてるらしいですが、時間軸を入れ替えることで、夫の包容力を際立たせた構成に拍手。これは共同脚本も手掛けた原作者ノエル・カワードの功績かな。
最後にごちゃごちゃ付け加えないのも潔し。
夫は妻を信じ、戻ってくるのを待っていたんだとわかった瞬間泣けてしまった。
大きな瞳で恋の歓びと罪悪感、苦しみを表現したセリア・ジョンソンはアカデミー賞主演女優賞にノミネートされてます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/逢びき