しまんちゅシネマ

映画ノート

【映画】ヒルビリー・エレジー -郷愁の哀歌-

f:id:puko3:20210423152046j:plain

ヒルビリー・エレジー -郷愁の哀歌-(2020)
Hillbilly Elegy

【あらすじと感想】
名門イェール大学に通うJ.D.ヴァンス(ガブリエル・バッソ)は、就職の面談を前日に控えたある日、姉からの電話で母親が薬物中毒で入院したことを知る。
今また彼の人生に家族の問題が立ちはだかろうとする中、J.Dは故郷に帰省し、過去に思いを馳せる。
 
『31 days of oscar 2021』祭り ーDay7

J・D・ヴァンスによる回顧録ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』を映画化したNetflix作品です。
監督は『アポロ13』のロン・ハワード

荒廃した田舎町で貧困にあえぐ3世代の家族の現実を、孫世代に当たる原作者が回顧録としてしたためたものです。
これ、観終わって思うのは、原作の副題”アメリカの繁栄から取り残された白人たち”のあたりは、あまり感じなかったなぁということ。

郷愁に重きを置いたのかもしれませんが、映画の半分以上はホワイト・トラッシュと言われる白人家族の、荒んだ暮らしぶりが描かれ、正直観ていて辛い。
しかし、そんな暮らしの中から、弁護士になってベストセラー本まで執筆した孫息子が出たのは大したものです。


何が彼の人生を変えたのか。
これからご覧になる方は前半ちょっと我慢して、中盤以降に描かれる、おばあちゃんの頑張りご覧ください。


悪の連鎖を断ち切り、D.Jの人生に光をもたらす役割を担ったのが、おばあちゃんです。
貧困の根底には「不幸な状況に身を置くことを、誰かのせいにして諦める」ことがあるという部分には、ハッとさせられるものがありました。

おばあちゃんを演じるのはグレン・クローズ
今回、怪演と評される演技でアカデミー賞候補になりましたが、
同時に、ラズベリー賞のワースト助演女優賞にもノミネートされてるんですよね。
思うに、あまりにも本物ソックリなところが悪評に繋がったのではないだろうか。

伝記ものによくあるように、本作でも最後に写真の「ご本人」たちが登場するんですが
本物なのかグレンなのかわからないくらいにそっくりなんですよねw
おばあちゃんの奮闘で、孫の人生が変わり始めるさまには感動するし、グレンも忠実に役をこなしていると思うんですが、普段の上品な雰囲気とのギャップが凄くて、ギャグに思えるほどというか・・(汗)

アカデミー賞技術部門では、メイクアップ&ヘアスタリング賞にもノミネートされていて、娘役のエイミー・アダムスも激似。
演技の巧さよりも作り込みが印象に残ってしまったので、ソックリ劇場もほどほどがいいのかも。

 


【Personal Note】
今回から個人的なつぶやきをPersonal Noteとして書き添えることにしました。
ささやかなあとがきです。

・・・・・・・・・・・・

グレン・クローズのノミネートに関連し、私自身のちょっと苦い思い出についてひとこと。
グレンさんは一昨年も『天才作家の妻 -40年目の真実- 』でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたんですよね。インディペンデント・スピリット賞ゴールデン・グローブ賞を受賞し、アカデミー賞でも、ついに!と期待された年でした。


私はTwitterを通じ、ブログ仲間と授賞式を楽しんでいたのですが、グレンが受賞を逃したことで、トラブル発生。

がっかりするブログ仲間の一人に「またいつかとれるよ」と声をかけ、ひどく怒らせてしまったのです。

「8回ノミネートされ結局一度も受賞がかなわなかったピーター・オトゥールを知らないのか」と。「安易な言葉は人を傷つける」と、叱られました。

グレンも今年オトゥールに並ぶ8回目のノミネートです。
大方の予想ではグレンの受賞の確率は低そうで、「歳をとると機会も少なくなる」との言葉も蘇ります。

実力者が必ずしもいい作品に恵まれるわけでもなく、
いい作品に恵まれたとしても、その上を行く人も出てくる
受賞は時の運という側面もあって、本当に難しいのだと
自分の言葉は安易だったと思い知ることになりました。

ごめんなさいと、なかなか素直に言えないけれど
いつか、反省の気持ちを伝えようと思う今日の日です。