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映画ノート

ヴェラ・ドレイク


2004年(イギリス・フランス・ニュージーランド)監督: マイク・リー出演: イメルダ・スタウントン /フィル・デイヴィス /ピーター・ライト /エイドリアン・スカー    ボロー / ヘザー・クラニー  他 【ストーリー】1950年、イギリス。ささやかだが幸せに暮らすドレイク家の主婦・ヴェラ(イメルダ・スタウントン)。しかし彼女は家族にも話すことができない大きな秘密を抱えていた。それは望まない妊娠をして困っている女たちに、堕胎の手助けをすることだった。
2004年度ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞主演女優賞のダブル受賞を果たしたマイク・リー監督の衝撃作。主演は「恋におちたシェイクスピア」のイメルダ・スタウントン

この映画の紹介で多くのものは「ある秘密」という表現にとどめています。
私がここで「堕胎を手助けする」と書いてしまうとそれはネタばれなのかもしれませんが、
映画の中で早期に出てくる場面でもあり、それを抜きにしては語れないのであえて書きます。



さりげない日常。ささやかながら暖かい団欒。そんな生活に幸せを感じる主婦。
主演イメルダ・スタウトンの演技力もあって、その「幸せ」は心地良く伝わってきます。
化粧っけのない地味な顔に笑みを浮かべ、毎日鼻歌まじりに、家中の家具をぴかぴかに磨き上げるヴェラ。
一家に一台、ならぬ一家に一人ヴェラが欲しい!

しかし、そんな日常がもろく壊れていく事件が・・・。

実はヴェラは家族に隠して、望まれない妊娠をした女性たちの堕胎を助けていたのです。
物語の後半は、ヴェラの苦悩と家族の絆について、そして、法はヴェラをどう裁くか、
という展開となります。

すばらしい映画・・・そう評価される作品ですが、正直私にはその良さが分かりませんでした。

理由はおそらく、ヴェラがあまりにも聖人のようだったから。
法律で許されない堕胎処置を繰り返す彼女に罪の意識はなく常に「女性たちを助けた」と表現するヴェラ。
「出血とともにそれは出てくる」と女性たちに説明するヴェラに、命に対する意識はなかったのか。

後半、次第に自分の犯したことに気づき、苦悩するヴェラをイメルダはよく演じていますが、
その後悔はあまりに遅い、と感じてしまいました。

作品としてはささやかな日常とそれが壊れ去ることの対比、家族の絆、役者の演技力を
楽しめるものであると思いますし、多くの人の感動を呼ぶものになっていると思います。

どう感じるかは観るもの次第。

 ★★★☆☆