しまんちゅシネマ

映画ノート

リダクテッド 真実の価値


2007年(米)監督・脚本:ブライアン・デ・パルマ出演:ロバート・デヴァニー、イジー・ディアズ、パトリック・キャロル、ダニー・シェルマン、ケル・オニール
■感想
2006年にイラクで実際に起こった衝撃の事件―米兵による14歳の少女レイプおよび彼女を含む家族4人惨殺事件―を題材に、
戦争の残虐性を描き上げるブライアン・デ・パルマ監督の最新作です。

前日観た「殺しのドレス」とは100%趣を異にする本作。そのギャップに驚きましたが
監督は「カジュアリティ」で、ベトナム戦争を描いていたのですね。

今回の舞台はイラク
兵士の一人が手持ちカメラを回し、仲間の兵士の日常を撮影するというスタイルをとった本作は
ドキュメンタリー風に見せた、フィクションです。


キャンプでの兵士同士の会話は、ネット上で展開する帰還兵の告白などを集めた内容を基に描かれたようで
大々的には明かされないものの、想像に難くない兵士の心理が見えてきます。

大量破壊兵器を探す目的でやって来たのに、兵器は見つからない。
信じるものがあって入隊したはずなのに、次第に目標を失い、それでも指示に従うだけの兵士。

チェックポイントを通過する少女の身体検査を、手袋を外し、念入りに行う姿には寒気を覚えます。
狂気と虚無感の中、レイプと家族の惨殺をやってのける兵士たちの様子も衝撃的です。


ヴェネチア国際映画祭では銀獅子賞(監督賞)を受賞し、外国からは賞賛の声も聞かれます。
ところが、アメリカ国内の反応はやはり今ひとつ。
事実から逸脱しているとして、怒りを露にするユーザーレビューも見受けられ、ヤフーのユーザー評価もD評価^^;

多くのアメリカ人にとっては、信じがたく、辛い内容ですが、「映画こそが戦争を止める」と信じる監督の真摯な思いが国民に伝わり、正しい判断力をもった国民が国を変えていくことを信じたいですね。


本作はR指定ですが、レイプシーンのみならず、報復行動による残虐なシーンもあり、
ラストには、空爆により怪我をした子供たちや、亡くなった人たちの映像や写真が流れます。

かなり衝撃的なものなので、ご覧になる方は注意ください。

日本公開は秋です!

★★★★☆