しまんちゅシネマ

映画ノート

愛を読むひと


2008年(アメリカ/ドイツ)監督:スティーヴン・ダルドリー出演:ケイト・ウィンスレットレイフ・ファインズ/デヴィッド・クロス/レナ・オリンアレクサンドラ・マリア・ララブルーノ・ガンツ【ストーリー】1958年のドイツ。15歳のマイケルは偶然出会った年上のミステリアスな女性ハンナに心奪われ、うぶな少年は彼女と彼女の肉体の虜となっていく。やがて度重なる情事のなかで、いつしかベッドの上でマイケルが本を朗読することがふたりの日課となる。
■感想

黒く塗りつぶせ!アカデミー&インディペンデント・スピリット賞

めぐりあう時間たち』のスティーヴン・ダルドリーが、ベストセラー『朗読者』を映画化した愛の物語。
アカデミー賞作品賞にもノミネートケイト・ウィンスレット主演女優賞を獲得しました。
期待を遥かに上回る、素晴らしい作品でしたよ。

1958年のドイツ。物語り前半は15歳のマイケルと歳の離れたハンナが出会い、身体を重ね合う姿が官能的に描かれます。
ハンナの希望に応じ、ベッドで本を読んで聞かせるマイケル。
しかし彼らの関係は長くは続かず、ある日ハンナは何も告げず、マイケルの前から姿を消します。



年月が経ち、法学生になったマイケルは教授(ブルーノ・ガンツ)らとホロコースト裁判の傍聴に行き、
そこで思いがけない形でハンナに再会することとなるのでした。
そして、ハンナが隠すある秘密に気付いたマイケルが、どう行動するかが大きな鍵となるのですが。。

とにかくケイト・ウィンスレットが素晴らしい。
具合が悪く道に座り込んでいる見知らぬ少年の世話をするほど、ハンナは心優しいところを持った女性なのだけど、
おそらくは教育を受けることの出来ない境遇に育ったのだろうと思わせる、どこか洗練されていないタイプなんですね。
それでもその内側に溢れんばかりの情感を秘めているのは、美しいコーラスに静かな感動の涙を流す場面からも窺えます。
何の説明もなくても、そのバックグラウンドや性格が想像できてしまうくらい、ケイトの演技は雄弁でした。

少年時代のマイケルを演じたデヴィッド・クロスも良かったですが
大人になったマイケルを演じたレイフ・ファインズもやっぱり上手い。

この時代、ホロコーストに関係した人々も時代に翻弄された被害者に違いなんですね。

ハンナ、マイケルともに、生涯抱えたものの大きさには心が痛みました。

それでも作品が暗いだけに終らないのは、学ぶことの素晴らしさを体感する主人公に感動するから。
【読む人】であり続けたレイフ・ファインズの愛とつぐないにも心を大きく動かされました。


いや、もう参った。スティーブン・ダルドリーやっぱりいいわ。

製作に昨年お亡くなりになった、アンソニー・ミンゲラシドニー・ポラックの両者が名を連ねています。



★★★★★