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映画ノート

終電車


バスターズと一緒にKill Nazis!7本目 『終電車

1980年(フランス)監督:フランソワ・トリュフォー出演:カトリーヌ・ドヌーヴジェラール・ドパルデュー/ジャン・ポワレ/ハインツ・ベネント/ポーレット・デュボスト   アンドレア・フェレオル/サビーヌ・オードパン/リシャール・ボーランジェ
■感想
12月になったけど、もう一踏ん張りナチ特集いきます。
今日はフランソワ・トリュフォー後期の作品『終電車

舞台は今回もナチス占領下のパリ。
マリオン(カトリーヌ・ドヌーヴ)は、夫に替わり、パリのモンマルトル劇場を切り盛りする女優。
劇場の支配人であり、演出家でもあるユダヤ人の夫ルカ(ハインツ・ベネント)は
ユダヤ狩りを逃れ南米に逃亡したことになっていたが、実は劇場の地下に潜み、国外脱出の機会を待っていた。

モンマルトン劇場を舞台に繰り広げられるこの映画は、
劇場の倉庫に身を隠すユダヤ人演出家の逃亡生活を描くと同時に、
次第に新しい俳優に惹かれていく妻マリオンのロマンスでもあります。

劇中劇を通して、微妙な心の変化を描くという心憎い演出。
ドヌーヴのお相手となるのはジェラール・ドパルデュー
一見デ・ニーロを思わせ、この頃まだ細めですね。

イングロリアス・バスターズ』でもメラニー・ロランが経営するパリの映画館というのがキーになりました。
占領下にあっても、パリの人びとにとって映画や演劇は貴重な娯楽だったんですね。

暖房の効かない家よりも劇場にと考える人が多かったとか
夜間外出禁止のため、終電車に人びとが殺到したとか
街を行き交うドイツ兵など、この時代のパリの様子がいたるところに見て取れます。

実際に有名な演出家が劇場の地下室に隠れ住んでいたという話もあり、夫ルカにはモデルがいたようです。
地下からリハーサルや上演の様子を窺う様子は『オペラ座の怪人』を思いだしました。
ルカの他にもドヌーヴ演じるマリオン以外の登場人物には、それぞれモデルがいたようですね。
演劇好きのジャコ少年は10歳のトリュフォーがモデルだそうです。



地下での隠遁生活にストレスを感じながら、しかも妻の気持ちが俳優に向いてしまったことを
リハーサルの声から察知してしまう夫も悲しいものがありますね。
私としてはドヌーヴの演技から、残念ながらドパルデューへの恋心をあまり察知出来なかったのもあり、
途中までその単調さにちょっと退屈してしまったんだけど、もっと注意深く観てたら面白かったのかも。


ユダヤ人迫害ものにつきものの緊迫感などは極めて少なめなのだけど
時代を映してるという点で興味深い作品でした。
緋色の美しさも印象的。





★★★*☆