しまんちゅシネマ

映画ノート

自転車泥棒

 
1948年(イタリア)
監督:ヴィットリオ・デ・シーカ
出演: ランベルト・マジョラーニ/エンツォ・スタヨーラ/リアネーラ・カレル/ジーノ・サルタマレンダ
 

■感想
今頃観たんかい!シリーズ^^;
 
今日はずっと気になってたヴィットリオ・デ・シーカの『自転車泥棒』を
戦後間もないイタリアを舞台に、貧困とその中で生きる親子を描いた作品ですね。
 
仕事をなくして久しい主人公が、ようやくポスター張りの仕事にありつくところから物語は始まります。
仕事には自転車が必要とあって、シーツを質に出しようやく自転車を手に入れたのに
なんと仕事初日に盗まれてしまうんですね。
あわてて犯人を追いかけるものの、見失う。警察に届けてもらちがあかない。
仕方なく主人公と息子ブルーノ父子は自分たちの力で自転車泥棒を探そうとしますが・・・。
 
ストーリーはこれ以上ないというほどシンプルですが
その中に戦後のイタリアの様子がぎゅーっと詰まってるんですね。
道でアコーディオンを弾いて小金を得る子供がいたり
主人公たちの登場シーンの傍らの、さりげない映像で時代を映す演出が見事です。
 
質屋の倉庫に自転車の質草であるシーツを保管する様子なんか、
未来世紀ブラジル』風SF映画を観るような感覚になりました。
すっごい高さまでおじさんがはしごも使わずスイスイと上って、天井付近の棚にしまうんですよね。
質屋の窓口にできた行列を見ても、その背景が窺い知れます。
 
暮らしぶりだけでなく、人についても、どことなく昔の日本に通じるところがあるような。
自転車泥棒にあったときも、通りがかりの車が追いかけてくれるし。
人の痛みがわかるから助け合う。今となってはちょっと懐かしいような人情を感じます。
 
父子はオーディションで選ばれた素人だったらしいけど、素朴さがぴったり嵌ってますよね。
自転車がなければ仕事を失う。。それがどれほど哀しいことかが伝わります。
ラストは思わぬ悲しい展開になり・・・。
顔をゆがめ、ついに父親がしゃくりあげ始めると
父の悔しさ、悲しさを誰よりも知っている息子がそっと手を繋ぐ・・。
ここでたまらず涙がこぼれました。
 
切ないお話ながら、リアリティがあって、必死に生きる人々の姿が心に残ります。
取らぬ狸の皮算用で、もしも仕事を続けることができたら、どれだけの収入を得ることができると
息子に語り、書き留めさせるシーンは微笑ましくて好き。
 
さすが名作!な1本でした。