しまんちゅシネマ

映画ノート

牛の鈴音

 
2008年(韓国)
監督:イ・チョンニョル
 

 
■感想
巨匠シリーズヴィットリオ・デ・シーカの二本目にいくところでしたが
昨日観た『ウンベルトD』の老人と動物繋がりで
今日は老人の牛との絆をみつめる韓国のドキュメンタリー『牛の鈴音』を。
韓国の山間の農村。
老人と一頭の牛は30年以上ともに畑を耕してきた。
通常は15年と言う寿命を遥かに超えた40歳の牛は、見たこともないヨボヨボぶりで
歩く姿もおぼつかないのだけど
今日も牛はお爺ちゃんを荷台に乗せ畑へと向かう。

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ウンベルトD』のウンベルトが愛犬に向けたような愛し方をするわけではない
年老いた牛を時には鞭打つのは互いに動き、畑に出ることが生きることの証だから。
でも、どんなにお婆ちゃんに文句を言われようと、除草剤を使わず
這い蹲るようにしてタンポポをとっては、牛に与える。それがお爺ちゃん流の愛し方。

そんな牛にもいよいよ命の終わりが近づいてきた。
お爺ちゃんの動揺が悲しい。
ついには立ち上がることもできなくなった牛の鼻につけられた鈴をおじいちゃんがそっとはずす。
もう仕事はしなくていいから静かにお眠り。
お爺ちゃんの瞳がそう言っていた。

誰にも老いはやってくる。
普遍の営みを淡々と描いただけの作品かもしれない。
だけども淡々とした中に無骨なお爺ちゃんの牛への思いが伝わり心をゆすぶられる。
ナレーターが語るドキュメンタリーではなく、お婆ちゃんの愚痴が説明になってるのは面白いw
おばあちゃん結構ひどいこと言ってるけど、牛ばっかりを愛すおじいちゃんへの嫉妬もあるよね。
でも本当はお爺ちゃんのことをしっかり分かってあげてる。
二人が何も言わずに静かにたたずむ姿にも涙。