しまんちゅシネマ

映画ノート

ゴーストライター

 
2010年
監督:ロマン・ポランスキー
出演:ユアン・マクレガー/ピアース・ブロスナン/キム・キャトラル/オリビア・ウィリアムズ/トム・ウィルキンソン
     
ベルリン特集 1本目
■感想
ベルリン映画祭の金の熊賞を獲ったものって、日本では公開もされないことがありますね。
今年の話題は銀熊賞の女優賞を『キャタピラー』の寺島しのぶさんが受賞したことと
ベルリン映画祭特集、トップバッターは、今年監督賞で銀熊賞を受賞したロマン・ポランスキーの『ゴーストライター』を。
30年前の事件で拘束された時、映画は製作の最終段階にあったらしく、映画を完成させるべく、
監督の監督を求める声が映画界からもあがったと聞いてます。
ようやく完成した本作は、ヒッチコック風味の知的なサスペンスと評される作品に仕上がってます。
 
 
主演にユアン・マクレガー
売れない作家の彼は、もと英国首相アダムの回顧録を執筆するために雇われたゴーストライター
前任のゴーストライターが不慮の事故をとげ、未完成の自叙伝を完成させることを求められ
沖合いの島にある、アダムピアース・ブロスナン)の別荘を訪れます。
と、同時にアダムは戦争犯罪人として、国際政治裁判所に追訴されることになり、
ゴーストライター自身も巨大な陰謀に巻き込まれる・・といったお話。

冒頭は、フェリーから次々に降りていく流れに反し、一台取り残された車
次に、浜辺に打ち寄せられた男の死体を遠めからのショットで映し出し
彩度を落とした映像と、『サスペリア』風の音楽も怪しく、早くもサスペンスの香り。
 
この溺死体が前任のゴーストライター
情報を得るうちに、ある秘密にたどり着くユアンの身に、ひたひたと危険が迫りくる様子が絶品です。
 
面白いのは主演のユアンは映画の中で実名は与えられておらず
彼自身も他の人間も彼をゴーストとしか呼ばないこと。
身よりもないけど、ちょっと自尊心と好奇心がある彼が
周りの誰もが怪しく見える中、飄々と謎を解明しようとするのは、ある意味、失うものがないから。
でも彼はゴーストでしかないというラストのワンシーンにも、ポランスキーストーリーテリングのうまさを感じるところ。
 
何気にユーモアのあるユアンの会話も面白いし
実力のある共演者のスニーキーな演技も光ました。
 
あれもこれも罠だったのか!?と唸ってしまうラストもナイス!
 
政治的なところは深くは追求してないけど、ブレア首相やブッシュを連想するところ。
ちなみに主人公には、監督自身を投影してるのかもしれません。