しまんちゅシネマ

映画ノート

風にそよぐ草


クリスティアン・ガイイの原作を元に、『去年マリエンバートで』の巨匠アラン・レネが描く、
奇妙な大人のラブストーリー。
カンヌで審査員特別グランプリを獲得しています。

 
風にそよぐ草(2009) フランス
監督:アラン・レネ
出演:アンドレ・デュソリエ/サビーヌ・アゼマ/アンヌ・コンシニ/エマニュエル・ドゥボス/マチュー・アマル    リック/エドゥアール・バール(ナレーション)

■感想
アラン・レネ監督でした。
過去作も知らないので、往年の作品との比較など何も出来ないのだけど
本作は御歳88歳の監督が撮ったとは思えない遊び心を感じました。
 
冒頭、一人の女性が靴をショッピングするところから始まります。
キャンディのように色とりどりのお洒落な靴たちで画面が埋め尽くされ
このシーンだけで女性はワクワクになると思うなぁ。
フランスの靴屋さんってなんて素敵なんでしょ。しかも店員さん我慢強いw
 
ようやく靴をお買い上げしたヒロイン(サビーヌ・アゼマ)ですが、
その帰り、ローラースケートを履いた若者にバッグを盗まれてしまいます。
この財布をショッピングセンターの駐車場で拾うのが主人公の中年男ジョルジュ(アンドレ・デュソリエ)。
これがヒロインと交流するきっかけになるんですね。

ヒロインは元パイロットで、現在は歯科医として生計を立てる独身女性
ジョルジュはパイロットを夢見ながら果せなかった父親の影響か
飛行機に大変な情熱を持っていて、パイロット免許を持つヒロインへの関心は
ストーカー行為にまで発展
 
まぁ、なんと言うか、
ヒロインがこんな迷惑オヤジに惹かれていく理由が分からんといえば分からんのですが
二人の心は奇妙な接近を果すんですよね。
孤独な魂が共鳴する感じなのかな。
ほのかな愛を綴ったといえばそうだけど、これかなり屈折してて、
かつ寓話的です。
 
映画の顛末にも目がテン
さりげに笑いの要素を入れながら、唐突にでも静かに迎えるラストシーンに
監督自身の理想をみたような気もします。
ラストの台詞も意味不明で「だれかおせーて」ではあるけど
転生とか、そんなことも意識してるのかな。


マチュー・アマルリックは意外なことに警察官として登場
あの大きな目での演技はコミカルでもありながら
掴みどころのない登場人物オンパレードの中で、温かみのある存在となってました。
あの役でここまでの存在感を出せるのはさすが