しまんちゅシネマ

映画ノート

ザ・ビリーバー/The Believer(原題)


大映画祭特集 2本目
今日もサンダンスからの一本
これ、『ヘドウィグ~』と同じ2001年にグランプリを獲得した作品なんですが
日本には全く入ってきてないのね。邦題もなしです。
ライアン・ゴズリング主演の問題作『ザ・ビリーバー/The Believer
 
ザ・ビリーバー/The Believer(2001)アメリ
監督:ヘンリー・ビーン
出演:ライアン・ゴズリング/サマー・フェニックス/ビリー・ゼインテレサ・ラッセル/ギャレット・ディラハント
 
ハリウッド俳優の中で今 一番の注目株は? と聞かれたら、
まっさきに ライアン・ゴズリングをあげます。
注目作品の公開が目白押し。 その実力が徐々に認められてきてますね。

本作で、ライアンが演じるのは、ネオナチに傾倒するダニエル。
スキンへッドにナチのTシャツといういでたちで
仲間とビリー・ゼインの主催するファシストの会に参加する 反ユダヤを掲げる青年です。
憎々しくユダヤ人学生を見つめ、電車を降りた学生の後を追い、暴行を加える 
その緊張感たるや、半端じゃない。
 
ネオナチが、ユダヤ人を憎む様子を描くスリラー・・と思いきや
映画はそんな単純じゃないのですよ。
 
まず驚くのが、ダニエルは、実はユダヤ人であるという事実。
そして、これ少しネタバレだけど、彼はフラッシュバックで、
ナチス兵として、ユダヤ人を虐殺する自分の姿を見るわけなんですね。
これはダニエルの前世の姿なのか・・・
 

 
ダニエル自身、反ユダヤ的な破壊行動に出る一方で
ユダヤ教を敬うという、まるで逆の行動を取り始める
もう、どっちやねん!って話なんですが
彼の中に潜む両面性が複雑極まりない。
最もそれを象徴するのが、
ユダヤ教の教会から持ち帰ったタリート(礼拝のときに男性が着用する布)を腹に巻き
「ハイル・ヒトラー」のナチス式敬礼を繰り返すという、おぞましいシーン。
 
ラストは、ダニエルの輪廻の業とも言える、ファンタジーなシーンで終わり
切ない余韻を残しました。
 
これ、かなり面白い作品だと思うんだけど、内容が内容なだけに、
ユダヤ人支配のハリウッドから嫌われ、映画祭の直後は配給が付かずじまい。
のちにマイナーな会社が買い上げ
ケーブルで放送されていたものの、911以後はスケジュールもキャンセルになったとか。
そんないわくつきの作品だけど、存在は知っておいてもいいかなと思い、記事にしました。
 
ダニエルを演じるゴズリングの演技は見もの.。
恋人役のサマー・フェニックス(リバーの妹)との刹那な恋物語でもあります。
隠れた問題作ですね。
トレーラー貼っておきます