しまんちゅシネマ

映画ノート

繋がっていく壮大なホラ話の感動『フィッシュストーリー』

伊坂幸太郎の同名小説を、『アヒルと鴨のコインロッカー』の中村義洋監督が映画化した
ちょっぴりファンタジーなヒューマンドラマです。





フィッシュストーリー
2009年(日本)
原題:
監督:中村義洋
出演:伊藤淳史高良健吾多部未華子濱田岳森山未來



2012年。巨大彗星接近により地球滅亡まであと5時間。

もぬけの殻の商店街を電動車椅子で行く男は
開店中のランプの点ったレコード屋に訝しそうに入っていく。
そこには普通に営業中の2人の従業員。
「おたくら何やってんの? 地球が滅亡するんだよ。知ってるよね?」


ネットレンタルのお勧めにあったので観たのだけど
「地球滅亡?」「パンクバンドの解散曲が地球を救うお話?」と
その奇想天外な設定にまずビックリ。

映画は数十年の時間を行き来して
先駆的パンクバンドの「逆鱗」メンバーの葛藤や、
気弱な青年の合コンの一日、
はたまた修学旅行中にシージャックに会ってしまう女子高生など
異なる5つの時代のエピソードを紡ぎます。

正直、「地球滅亡の話はどこいったの?」と心配になる頃
物語は、驚きの因果関係で繋がり始めるんですね~。



小さいときには仮面ライダーなど
「正義の味方」を謳うTV番組を観ていたけれど
いつしか観なくなってしまうのは、そんなのはマヤカシだと気づくから。

「この世に正義の味方なんて存在しない」
「世界を変えるようなことが自分にできるはずがない」
「ましてや、世界の滅亡を止められるはずもない」

それは、「自分たちの音楽が売れるわけがない」 
と結論付けた逆鱗のメンバーが辿った道と同じ。

だけど、自分たちの音楽を信じ、成功を夢見ていた彼らの情熱が
最後のレコーディング曲「フィッシュストーリー」を生み、
ある奇跡を起こすことになる。
その曲の誕生もまた、小さな偶然の繋ぎ合わせ。

ちょっとフィッシー(うさんくさい)な内容でありながら
繋がって、繋がって、一気に映画を動かしていく終盤の展開に興奮し
泣きそうにもなった。

人ひとりの力は小さいけれど、情熱や希望は
誰かに影響を与え、大きな力を生むこともあるのかもと思える
素敵な作品でした。

トマトメーター100%
この痛快さを日本人以外の映画ファンも理解してくれてるのが
嬉しいじゃないですか。

★★★★