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映画ノート

『闇を生きる男』 過去に翻弄された男の喪失感と宿命

1995年にベルギーで起きた殺人事件をもとに描き
2011年アカデミー外国語映画賞にノミネートされたベルギー発のクライムドラマです。

 


闇を生きる男 2011年(ベルギー)
原題:
Rundskop / Bullhead(英題)
監督:ミヒャエル・ロスカム
出演:マティアス・スクナールツ 、イェルーン・ペルスバール 、バーバラ・サラフィアン フィリップ・グランドンリー

 
畜産農家としておじのビジネスを助ける青年ジャッキー。彼らの扱う牛には違法なホルモン投与がされている。
そんな中、ホルモンマフィアを捜査する警官が殺される事件が発生。
事件に係わるマフィアは、警察の捜査を逃れるため新しい取引先としてジャッキー一家に目をつけた・・。

アカデミー外国語映画賞にノミネートされていてチェックした作品ですが
日本ではヨーロッパ映画祭で既に公開されてるんですね。
本作は95年にベルギーで起きた、ホルモンマフィア絡みの殺人事件にインスパイアされ監
督のミヒャエル・ロスカムが長い時間をかけ映画にしたもの。

単なる殺人事件を扱うミステリーではなく、そこに悲劇を加えたノワールな作品にしたかったとのこと。
どうせならホルモン絡みでというアイディアが斬新^^;

どんなに過去から逃れようとしても、あるときそれは突然舞い戻る
終いにはへまをやらかす。出口なんてありゃしない。

冒頭、主人公ジャッキーの独白です。
ホルモンマフィアと取引する上で、ジャッキーはある男と出会います。
その男とジャッキーの関係は、途中のフラッシュバックを介して明らかになるんですが
その出会いは、ジャッキーが20年間封印してきたある事件を蘇らせジャッキーは過去に対峙することになるんですね。
同時に彼はマフィアと警察との抗争に巻き込まれることになる。



allcinemaの作品紹介にも記載されてるので書きますが実はジャッキーはある事件で睾丸を失った男。
以来ホルモン投与を必要とする彼は、必要以上とも見える薬物とトレーニングにより、
隆々とした筋肉で身体を覆っている。

猛々しく同業者を威嚇する姿は、性の喪失を虚勢でごまかしているようにも見えるところが悲しい。
そんなジャッキーの必殺技は頭突き(笑)

正にブルヘッドw マティアス・スクナールツは、なんと筋肉トレーニングで一年で30キロほども増量し役に臨んだというから凄い。

過酷な過去に翻弄され、心の闇をヴァイオレンスで破っていくジャッキーの危うさ
ジャッキーを守れなかった友人(イェルーン・ペルスバール)もまたその薄い髪に20年の葛藤を偲ばせる
マフィア絡みのクライム・サスペンスと青春物語がミックスされた独特の味わいで、
運命と因縁を描ききる秀作です。

★★★★