しまんちゅシネマ

映画ノート

哀しみのトリスターナ



ブニュエルをもう一本。
カトリーヌ・ドヌーヴを主役に迎えて作った、ブニュエルのスペイン映画のうちの一本です。







哀しみのトリスターナ(1970)西ドイツ・フランス・スペイン・イタリア
原題:Tristana監督:ルイス・ブニュエル

両親を亡くしたトリスターナ(カトリーヌ・ドヌーヴ)を名付け親であるドン・ロペが養父として引き取り、ともに暮らすことになる。美しく成長するトリスターナを愛し始めるドン・(フェルナンド・レイ)ロペ。いつしか肉体関係となる二人だったが、トリスターナは内心で老いていくドン・ロペを憎み、やがて愛する人フランコ・ネロ)をみつけ、ロペのもとを去った。しかし二年後、病魔に侵されたトリスターナは・・。。

全米で最近ブルーレイが発売された、ドヌーヴ&ルイス・ブニュエル初タッグ作品。
先日の『欲望のあいまいな対象』で好色爺を演じたフェルナンド・レイが、幼女トリスターナを愛す養父を演じていますが、ここでも彼は、変わっていくトリスターナに疎まれる爺様役なんですね(笑)

ドヌーヴ演じるトリスターナは、純真な乙女のときにドン・ロペに引き取られ、貴族で仕事もしないドン・ロペに半ば拘束されて大人になっていく。
彼女はときに、鐘楼にドン・ロペの生首が吊るされた夢をみるのですが、この絵に見覚え有り。
そう、桜田淳子ちゃんがヒロインを演じた金田一シリーズの『病院坂の首縊りの家』にそっくりなシーンがありましたね。本作へのオマージュだったのかしら。





変わっていくトリスターナを見事に演じたドヌーヴがとにかく美しい。
トリスターナの過ごしてきた人生を走馬灯のように見せる終盤の回想シーンで、清純だったトリスターナが、いかに冷酷にシニカルに変わっていったかを目にするとき、トリスターナの人生に思いを馳せることになりました。


鐘楼に生首・・
それはトリスターナの密かな願望の表れだったんでしょうね。

雪の降る夜、そっと窓を開ける・・
そのシーンに、トリスターナの哀しみと憎しみを凝縮させるブニュエルに脱帽した次第。