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映画ノート

【映画】夢かうつつか『怪奇な恋の物語』

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怪奇な恋の物語(1969)
イタリア
原題:A Quiet Place in the Country
監督/脚本:エリオ・ペトリ
出演:ヴァネッサ・レッドグレーヴ  / フランコ・ネロ/ ジョルジュ・ジェレ  / ガブリエッラ・グリマルディ/ リタ・カルデローニ 

 【あらすじ
ミラノの高名な画家レオナルド・フェッリ(F・ネロ)は、最近妄想に悩まされていた。彼のエージェントである愛人のフラビア(V・レッドグレーブ)とのエロチックな殺人劇が夢に現れるのである。


【感想
久々にレトロ作品の感想を。

今日はヴェネチア映画祭銀熊賞を受賞したエリオ・ペトリ監督によるイタリア産ミステリー・ホラーです。
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冒頭、半裸でロープに縛られ椅子に座る画家のレオナルド(フランコ・ネロ)。
その周りを家電製品で取り囲み、喜々として電源を入れるのはヴァネッサ・レッドグレーヴ演じるフラビア。
その後二人はお風呂でイチャイチャ。と、思いきやフラビアにナイフで滅多刺しされ・・

いきなり主人公ご退場 なわけはなく、
レオナルドの夢だったことがわかるんですが、画家のレオナルドはどうやらスランプに陥っていて
マネージャー兼愛人のフラビアに制作をせかされ精神的にいっぱいいっぱい。
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あかん、いっとき休養するわ 
レオナルドは静養のため田舎の古い館に住み始めるも、そこでも新たな事件に遭遇するという話です。

  
銃弾によるものと思われる無数の穴の空いた外壁、壁に花を供えに来る男
女性の顔の浮かび上がる壁、夜間の物音、壊されたキャンバス
フラビアを襲うように崩壊する家
その館に住んでいたという美しいワンダの亡霊と死の真相

それらをミステリー風に見せていくわけですが
面白いのは館にまつわる幽霊譚と、画家の狂気との境界があいまいになっていくところ。
ワンダの霊の仕業と思われた部分も、潜在的な殺意の表れだったのか
レオナルドの観ていた世界を客観的に見せるラストは衝撃的であると同時に哀愁を感じるものでした。
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当時プライベートでもラブラブだったはずのヴァネッサとフランコ
この映画で二人の仲に亀裂が入らなかっただろうかと余計な心配してしまった。

監督は当時出回り始めた家電製品に感じる違和感や、ヴァネッサ役のフラビアに重ねた金の亡者的な世情への違和感を映画に重ねたのだそうで、社会派として知られる監督らしい発想の転換が面白い。

エンニオ・モリコーネによる、音楽というより効果音に近い奇怪な音の演出も印象的でした。