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映画ノート

偽りなき者





光のほうへ』の トマス・ヴィンターベア 監督が、デンマークの小さな村を舞台に、少女の嘘から言われのない迫害を受けることになる男の姿を描くドラマです。

偽りなき者(2012)デンマーク
原題:Jagten
監督:トマス・ヴィンターベア
出演:マッツ・ミケルセン/アレクサンドラ・ラパポート/トマス・ボー・ラーセン/ラース・ランゼ
アンヌ・ルイーセ・ハシング/シーセ・ウォルド
日本公開:2013/3・16
友人にも教え子の間でも人望の厚い、一人の幼稚園教師ルーカス(マッツ・ミケルセン)の運命が、園児クララのついた小さな嘘を発端に狂い始めるという話です。

 「子供は嘘をつかない」と園児の言葉を信じる園長先生、気は確か?
ルーカスの話もちゃんと聞かず、子供相手に事情聴取する警察もどうかしてる。
クララの言葉が曖昧になってくると「怖くて本当のことを言えないんだろう」と。
挙句に自分の疑惑を押し売りするんだから始末が悪い。

 そもそも何故クララがそんなことを言うのかは、映画の中でヒントがいくつもある
心理学者の介入があれば、ルーカスが変質者の烙印を押されることはなく、あるいは真犯人も明らかになったかもしれない。そう思うとやるせさでいっぱいになります。




 冤罪に翻弄され堕ちていくルーカスですが、彼は必死に自分の権利を主張し
彼を排除しようとする地域住民にも果敢に立ち向かうのですよ。
自分は無実だという真実と、守るべき家族がいたことが彼を支えていたんでしょうね。
しかし、いくらルーカスが無実を主張しても、証明する術がないのがもどかしい。
クララを追及すれば、あるいは真実にいきついたかもしれないけれど、ルーカスはそれをしない。
どんな立場にあっても、クララを責めず、教育者としてクララに接する姿に頭が下がります。
人として威厳を持ち続ける様子に感動もありました。

 ラストシーンは唐突で衝撃的でした。
事件を闇に葬り去りたいと願う人物はやはりいる。
「狩り」は終わらないんだと、ここにきて原題の意味を改めて思い知らされるわけです。
真犯人、私は分かってしまいましたが、監督は敢えて真相を明かさないのですよね。
甘い終わり方をさせない作りも監督なりの意図があるのでしょう。ニクいぞ。




ルーカスを演じたマッツ・ミケルセンはカンヌで男優賞受賞の素晴らしい演技。
クララを演じた子役のうまさにも驚きました。