しまんちゅシネマ

映画ノート

【映画】ニースの疑惑 カジノ令嬢失踪事件

inthenameofmydaughterposter.jpg

 ニースの疑惑 カジノ令嬢失踪事件(2014)フランス
原題:L'homme qu'on aimait trop/In The Name of My Daughter
監督:アンドレ・テシネ
脚本:セドリック・アンジェ/ジャン=シャルル・ル・ロー/アンドレ・テシネ
出演:カトリーヌ・ドヌーヴギョーム・カネ/アデル・エネル /ジュディット・シュムラ

【あらすじ】
76年、南仏ニース。カジノの筆頭株主である女性実業家ルネの娘アニエスが、結婚に失敗して故郷へ戻ってくる。ニースではイタリアのマフィアがカジノ経営権を狙っていたが、ルネは顧問弁護士モーリスの助言によってカジノの新社長の座に就く。一方、母ルネに強い反発心を抱くアニエスは、モーリスと恋に落ちてルネと対立する立場にまわり……。


ミステリー祭り6本目

アンドレ・テシネがフランスのニースで実際に起きた事件を映画化した作品です。
タイトルの「失踪事件」につられましたけど、ミステリーとはちょっと違った(汗)
inthenameof.jpg
ギョーム・カネ演じるモーリスはルネ(ドヌーヴ)の顧問弁護士を務めながら、ルネのカジノの共同経営者に収まることを目論んでいる。しかしその野心を見抜いたルネはモーリスを解雇。すると今度は娘のアニエスに取り入るわけです。甘いお顔でとんでも強欲なギョーム・カネのワルっぷりが半端ない。
wk-name0522-2.jpg
アニエス自身、空港に迎えに来た初対面のモーリスと運転手を待たせて海で泳いだりする奔放かつ自己中な女性。母に対してそれほど美人でない自分に引け目を感じてか、どこか卑屈な雰囲気も。
そんな女の子が恋に落ちると、周りなんか見えやしない。
妻子や愛人までいるモーリスを愛し、冷たくされ始めると自殺するぞと脅す始末。
いや、モーリスでなくても殺したくなるかも・・。

実際彼女は自殺未遂を起こしてしまい、電話に出ないからとモーリスは警察に通報。
しかし、このときモーリスはアニエスの住所を間違えて伝えるんですよね。
発見が遅れることを期待したんでしょ、これ。
幸い(不幸にも?)アニエスは一命をとりとめる。
しかし、間もなくアニエスは忽然と姿を消してしまいます。

アニエスはどこに?

と思っていたら、映画はいきなり20年後に飛んでみんな急に老けた(笑)
アニエスの失踪に関する20年前の裁判結果を受け入れられないルネが、再びモーリスを訴え裁判を起こす。10年争って新たな判決が出るんですが・・。

カジノ社長時代の華やかさは影を潜め、老けて質素な佇まいのドヌーヴが悲しかったなぁ。
疎まれ、裏切られても母は娘を愛し、その捜索と裁判に実に30年の月日と財を投じたんですね。

邦題はいかにもミステリーを思わせますが、英題はIn The Name of My Daughter
謎を解くというより、娘の名にかけて真実を追求しようとする悲しき母の物語ということでしょう。
ただ、ドヌーヴの心境は映像でおもんぱかる部分が殆ど。それならミステリー部分を際立たせる演出にした方が面白かったかも。


終盤、悪夢に目覚める若きモーリス。間を置かず映し出される、同じように夜間目を覚ます現在のモーリスの姿に、彼が30年間、こうして夜を過ごしてきたであろうことを知ることになりました。この演出はよかった。

娘の裏切りにより社長の座を追われたルネがカジノを後にするとき
カーラジオから聴こえてきた『うわさの男』(イタリア語バージョン!)を運転手の青年とやけっぱちで歌うドヌーヴさまを貼っておきます。